お腹の中の赤ちゃん、生まれたばかりの赤ちゃんが一生を走り続けるためのエンジンである心臓に「病気がある」と告げられた時のお母さん、お父さんのショックははかりしれません。さらに「生きるには手術しかない」と医師に告げられた時には出口のない道に迷い込んでしまいます。「もっと強く生んであげたかった」、「これから赤ちゃんはどうなって行くの?」、「家族・・・、仕事・・・」
様々な心配が思い浮かぶことでしょう。
そんな不安や心配をかかえているお母さん、お父さん、そして赤ちゃんに私たち心臓治療チームは寄り添ってきました。正確な診断と現状の評価、適切な治療プラニングと実行、そして幼児~学童期~思春期~成人期にいたるまでの成長にともなったフォローアップといった心臓の治療だけではなく、子供たち本人の心理や家族の思いに寄り添ったスタッフ対応、そして地域ぐるみの支援をチーム一丸となって提供させていただいています。
順調に大きく成長していく赤ちゃん、大きな治療を何度も乗り越えて進んでいく赤ちゃん、そして残念にも力尽きて先に天国で待ってくれている赤ちゃん・・・。みんな一生懸命に生きて、小さな命を通して私達を導いてくれます。
このウェブサイトが、心臓に病気のある赤ちゃんとお母さん、お父さんの「道標」になってくれることを願っています。
小児心臓血管外科 根本慎太郎 拝
専門の小児科医が産科の先生と協力をして年間約100件の胎児心臓超音波検査を行っています。先天性心疾患の中には出生直後から治療を開始しないと救命できない場合があります。胎児期に超音波検査を行い、診断を行うことで出生後の治療の準備が可能になり適切な治療介入が行えます。胎児心臓超音波検査で複雑先天性心疾患の診断がついた場合、小児科医、産科医、小児心臓血管外科医、麻酔科医、NICU専属医、各部署の看護師、リエゾンナースが集まり、出産時期や出生後の治療などをチームで検討しお子さんの出産に備えます。
胎児期の診断、出生後の診断や治療はもちろん必要ですが、家族、特に母に対するケアーも非常に重要と考えています。一般的に母は心臓病を抱えて生まれてきた子供に対して申し訳ない気持ちになり落ち込んでしまうことが多いです。その感情は家族のサポートがあっても悪くなりがちです。そこで当院ではリエゾンナースに早期に家族とのかかわりを持ち、精神的な面でも家族をサポートできる体制が整っています。家族と寄り添い、色々な場面で家族のサポートができるように心がけています。
心室中隔欠損症など単純な心疾患から、ファロー四徴症、単心室形態といった複雑な心疾患まであらゆる先天性心疾患に対応が可能で、新生児期を含めて赤ちゃんの心臓手術が可能です。
先天性心疾患をお持ちのお子さんは心臓の問題だけではなく、他の問題を併せ持っている場合や、心臓術後の経過の中で心臓以外の治療が必要になることがあります。また、低出生体重児や染色体異常のお子さんに対しても小児科の他の分野の専門医や小児麻酔科医、小児外科医、小児脳外科医、臨床工学技士、専門看護師など数多くの職種、専門医と連携を図り診療にあたり総合的に患児をみていく体制ができています。そのおかげで、21トリソミー・18トリソミー・13トリソミーなどの染色体異常のあるお子さんの心疾患に対しても積極的に心臓手術を含めた治療を行い、経験が豊富で、他府県からもそういったお子さんの治療方針などの相談を受けております。
以前は18トリソミー・13トリソミーのお子さんに対しては短命であることを理由に心臓病を抱えていても治療や手術が行われませんでした。最近では、積極的な治療や心臓手術によって生存期間が長くなることが分かり、心臓手術を行う施設が増えつつあります。当院でもお子さんの状態や心臓の状態、ご家族の希望に合わせて、以前から根治術を含めた心臓手術を積極的に行っています。もちろん、すべてのお子さんに手術を行っているわけではありません。しっかりとご家族と話し合い、手術を行うかどうかを決めています。いろいろな選択肢がないことはお子さんにとってもご家族にとっても辛いことです。当院では看取りから根治術までお子さんの状況、ご家族の希望に沿って対応出来るように体制を整えています。それらの選択は非常に大事であり、そして、ご家族にとっては非常に難しい選択になりますが、決めるまでの過程においてもサポートさせていただきます。
先天性心疾患の患児は退院後も継続した治療が必要になります。当院でのフォローはもちろんのこと、連携施設である、関西医科大学附属病院・高槻病院をはじめ、開業医の先生たちと密接に連携を取り、必要に応じて訪問看護師とも協力し地域でフォローアップをしています。一般小児科では小児循環器専門医が多数在籍し、心不全治療や心臓カテーテル検査・カテーテル治療のための入院も可能です。また、心臓病を抱えるお子さんが他の病気になった時も、各分野の小児専門医と連携を取り、治療介入など対応が可能です。さらに当院の小児科には不整脈専門医が常勤しており、子供の不整脈にも対応が可能です。WPW症候群・房室結節回帰性頻拍・心室頻拍・心室性期外収縮・心臓手術後の頻脈発作などに対するカテーテルアブレーションによる治療も可能である数少ない施設の一つです。
患児のサポートはそれにとどまらず、NICU卒業後も継続してフォローを行います。当院には成人先天性心疾患外来があり、将来の診療体制も充実しております。また、そういった成人先天性心疾患外来での診療経験により、将来どういった問題が生じ、それに対してどう対処すればよいか、新生児期にフィードバックもされより充実した新生児期の医療にもつながっています。
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
心臓カテーテル検査件数 | 68 | 58 | 61 | 75 | 件 |
うち心臓カテーテル治療施行数 | 3 | 8 | 18 | 28 | 件 |
カテーテルアブレーション施行数 | 8 | 3 | 5 | 1 | 件 |
心臓超音波検査件数 | 1,130 | 1,066 | 1,105 | 1,128 | 件 |
2014年から2022年の胎児診断の内訳 | |||
疾患名 | 症例数 | 染色体異常 | 症例数 |
心房中隔欠損 | 1 | 13トリソミー | 9 |
心室中隔欠損 | 34 | 18トリソミー | 10 |
三尖弁異形成 | 2 | 21トリソミー | 9 |
エプシュタイン病 | 4 | 22q11.2欠失症候群 | 6 |
ファロー四徴症 | 16 | ゴールデンハー症候群 | 1 |
房室中隔欠損症 | 9 | ターナー症候群 | 1 |
両大血管右室起始症 | 11 | 22q11.2欠失症候群 | 6 |
完全大血管転位症 | 9 | ||
心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 | 20 | その他 | 症例数 |
心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症 | 2 | 不整脈 | 3 |
主要体肺側副動脈と心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 | 4 | その他 | 15 |
修正大血管転位 | 4 | ||
血管輪 | 7 | ||
総肺静脈還流異常症 | 4 | ||
大動脈縮窄症 | 11 | ||
大動脈弓離断症 | 2 | ||
三尖弁閉鎖症 | 2 | ||
単心室 | 15 | ||
左心低形成症候群 | 8 |
胎児心臓超音波検査施行数(年間) | ||
総数 | 先天性心疾患症例 | |
2017年 | 121 | 90 |
2018年 | 159 | 99 |
2019年 | 101 | 63 |
2020年 | 109 | 71 |
2021年 | 100 | 64 |
2022年 | 119 | 83 |
2023年 | 101 | 63 |
岸 勘太
きし かんた
卒業年 | 平成11年 |
現職 | |
専門領域 | |
先天性心疾患、小児肺循環 | |
専門医 | |
小児科専門医、小児循環器専門医 |
尾崎 智康
おざき のりやす
卒業年 | 平成12年 |
現職 | |
専門領域 | |
先天性心疾患、小児不整脈 | |
専門医 | |
小児科専門医、小児循環器専門医 |
小田中 豊
おだなか ゆたか
卒業年 | 平成18年 |
現職 | |
専門領域 | |
先天性心疾患、胎児心臓病、血管内皮機能 | |
専門医 | |
小児科専門医、小児循環器専門医 |
蘆田 温子
あしだ あつこ
卒業年 | 平成21年 |
現職 | |
専門領域 | |
先天性心疾患、成人先天性心疾患 | |
専門医 | |
小児科専門医、小児循環器専門医 |
根本 慎太郎
ねもと しんたろう
卒業年 | 平成元年 |
現職 | 科長 |
専門領域 | |
先天性心疾患 | |
専門医 | |
外科専門医、心臓血管外科専門医、循環器専門医 |
小澤 英樹
おざわ ひでき
卒業年 | 平成5年 |
現職 | 医長 |
専門領域 | |
先天性心疾患、弁膜症、大動脈疾患、ステントグラフト治療 | |
専門医 | |
外科専門医、心臓血管外科専門医、循環器専門医 |
小西 隼人
こにし はやと
卒業年 | 平成20年 |
現職 | |
専門領域 | |
先天性および成人心疾患の外科治療 | |
専門医 | |
外科専門医 |
島田 亮
しまだ りょう
卒業年 | 平成21年 |
現職 | |
専門領域 | |
先天性および成人心疾患の外科治療 | |
専門医 | |
外科専門医 |
鈴木 昌代
スズキ アキヨ
卒業年 | 平成25年 |
現職 | |
専門領域 | |
先天性および成人心疾患の外科治療 | |
専門医 | |
外科専門医 |
*「FAX紹介申込書」と「診療情報提供書」を医療連携室へFAXしてください。
大阪医科薬科大学病院 医療連携室 FAX.072-684-6339
大阪医科薬科大学病院 医療連携室ホームページ https://hospital.ompu.ac.jp/for_doctors/application.html
・小児科 専門外来担当表
・心臓血管外科・小児心臓血管外科 専門外来担当表
胎児心臓病外来の受診方法
*当院の医療連携室より、産婦人科 胎児心エコー循環器 の外来予約をしてください。
第1、3、5週の月曜日の14時30分から16時45分で行なっております。
*病院代表電話またはホットライン、患者紹介・相談用専用メールアドレス(下記)で
直接、担当医師と連絡を取り合うことも可能です。
大阪医科薬科大学病院 代表電話 072-683-1221
赤ちゃんの心臓ホットライン(医療関係者専用) 090-5069-6316
緊急の場合、昼夜、休日を問わず“!”、“?”と思われましたらご利用ください。
患者紹介・相談用専用メールアドレス kidsheart@ompu.ac.jp