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肝臓病の基礎知識

アルコール性肝障害

節酒ではなく禁酒(断酒)が改善の近道です!!

症状がなくても定期検診をうけることが重要です!!

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では生活習慣病を高める飲酒量(1日あたりの純アルコール量)として、 男性で40グラム以上、女性で20グラム以上摂取された場合と定義されています。 なぜならアルコールは、肝障害、膵障害、糖尿病や認知症などの原因となるからです。 アルコール性肝障害の頻度は、成人の10-15%とされ、そのほとんどがアルコール性脂肪肝です。 2018年の肝臓学会のまとめでは、肝硬変の原因としてアルコール性肝硬変が62.2%でもっとも多く占めており、 今後アルコールによる肝疾患がさらに上昇すると考えられています。 アルコール性肝障害は2つの病態に分かれ、1つ目はアルコール性脂肪肝より繊維化した後に緩徐に肝硬変になる病態、 2つ目にはお酒を常習性に飲み、重症急性肝障害を呈する病態です。

<エタノール量の計算式>

摂取量(ml) × アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコールの比重)

例: ビール 500ml(5%)の場合の純アルコール量
500(ml) × 0.05 × 0.8 = 20(g)

 アルコール20g

お酒の適量を知る|人とお酒のイイ関係|アサヒビール (asahibeer.co.jp)

症状

緩徐に肝硬変に移行する病態は、自覚症状がなく、 20-30年の飲酒によってゆっくりアルコール性肝硬変に移行します。 長期(5年以上)大量飲酒されている方は、急性栄養不足やビタミンB不足、 時には貧血や末梢神経炎、肝細胞癌、食道静脈瘤、脱水、横断を発症する事があります。

治療

治療は基本的には、節酒ではなく禁酒(断酒)です。その他の治療法は補助的です。
アルコール性肝硬変に移行していなければ、禁酒で改善します。
ただ大量に飲酒されている方は禁酒直後、アルコール離脱症状(手のふるえ、発汗、幻視、精神的興奮など)が生じることがあるため注意が必要です。

<薬物療法>
・栄養不足を補うため、時にビタミンB群薬の投与(ウェルニッケ脳症や多発性神経炎の予防)を行います。

・抗酒薬(ジスルフィラム・シアナミド)
・飲酒欲求を抑制するアカンプロサートとナルメフェン
※いずれも服用さえすればアルコール依存症が治るわけではないことに注意が必要です!

日常生活の注意点

・禁酒(断酒)を守りましょう。それには、家族や周囲のサポートが必要となってきます。
禁酒を行う際のサポートとして、精神科への受診、もしくは断酒会などがあり社会連携を密にしたサポート体制を整えることが重要です。

・食生活の改善をしましょう。
<低栄養状態の場合>
バランスのとれた、高たんぱく、高エネルギー食を摂取しましょう。
(良質のたんぱく質やビタミン、ミネラルを含む食事)
<過栄養状態の場合>
脂肪肝の食事療法参照

・生活習慣を整えましょう
 アルコール性肝障害を改善するためには、基本的に規則正しい生活習慣が重要です。
・早寝早起き
・十分な睡眠
・十分な運動

・主治医の定期検診をきちんと受けましょう
採血で体の状態を知ることができます。様々な合併症を早期発見・早期治療できるように定期検診は受けて、医師と相談しながら治療を進めていきましょう。

まとめ

アルコール性肝障害は禁酒が改善への近道であり、節酒ではなく禁酒が大切です。 家族や周囲のサポートを活用しながら、禁酒を行い、生活習慣を整えましょう。肝 臓は「沈黙の臓器」と言われていますので、症状がなくても定期検診を受けることも大事です。