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B型肝炎

1. 定義・疫学

B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus ; HBV)持続感染者は世界で約4億人存在すると推定されており、わが国におけるHBVの感染率は約 1%である。感染経路としては母子感染及び水平感染(性交渉、針刺しなど)があり、ほとんどの症例では肝炎を起こさず安定化するが約1割は持続感染し慢性肝炎から肝硬変の経過を辿る。

2. 診断

HBs抗原はHBVDNA量を反映しており陽性であれば感染の診断となる。

3. 治療

治療目標・感染者の肝硬変・肝細胞癌の発症予防治療対象はALT:31U/L以上、HBVDNA:3.3 LogIU/mL以上の慢性肝炎、またはH BVDNA陽性の肝硬変が対象となる。

4. 治療薬

大きく分けて①インターフェロン②核酸アナログの2つに分かれる
インターフェロン
ウイルス増殖抑制作用と免疫賦活化の作用を持ち24-48週間の治療期間となる。核酸アナログと比較して奏功率は落ちるが、奏功するとその後の治療の必要がなくなる。肝硬変症例には推奨されない
核酸アナログ
現在大部分で使用されているHBV 複製過程を直接抑制する薬剤である。奏功率は高く肝機能低下症例にも使用できるが投与中止により肝炎再燃のリスクが高い
エンテカビル:ETV(バラクルード) 催奇形性あり 空腹時の服用
1回1錠を空腹時
テノホビル アラフェナミド:TAF(ベムリディ) 
1回1錠 食後

5. 治療効果

ETV 治療の発癌に対する効果は、5年発癌率が無治療対照群の13.7%に対して ETV では 3.7%と有意に減少、発癌リスク比が0.37と抑制されること、肝硬変においても発癌が減少することが報告されている。

6. 再活性化

HBV感染患者において免疫抑制・化学療法などにより HBVが再増殖( HBV 再活性化)することがあり再活性化による肝炎は「de novo肝炎」と呼ばれ重症化しやすいだけでなく、原疾患の治療を困難にさせる。そのため、免疫抑制・化学療法を施行する前には、全例においてHBs 抗原を測定し、HBs抗原が陽性のキャリアか、HBs抗原陰性であってもHBc抗体および HBs 抗体を測定し既往感染かを判断する。キャリアであった場合、または既往感染でHBVDNAが1.3LogIU/mL以上であれば核酸アナログを投与する。HBVDNAが陰性であっても定期的なHBVDNAのフォローが必要である。