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医療従事者の方へ

C型肝炎

1. 定義・疫学

C 型肝炎ウイルス(hepatitis C virus; HCV)は、1989年、米国の Choo らによって発見され、現在、HCV キャリアは全世界で 5800 万人、わが国で 90 万~130 万人存在すると推定されている。HCV 感染が一旦成立すると約70%で HCV 感染が持続し、慢性肝炎へと移行する。慢性化した場合、ウイルスの自然排除は年率 0.2%とまれであり、HCV 感染による炎症により肝線維化が惹起され、肝硬変や肝細胞癌へと進展する。感染経路は輸血製剤、薬物(注射)などの血液を介した感染が多い。

2. 診断

スクリーニング検査のHCV抗体陽性であった場合もHCV RNA陰性であれば既感染となり、HCVR NA陽性で感染が確定する

3. 治療

●目的・対象
治療目標は、HCV 持続感染によって惹起される慢性肝疾患の長期予後の改善、肝発癌ならびに肝疾患関連死を抑止することにある。対象は高発癌リスク群(高齢かつ線維化進展例)では可及的速やかに抗ウイルス治療を導入すべきでるが、DAAの普及により非代償性肝硬変を含むすべての C 型肝炎症例が抗ウイルス治療を検討することが推奨されている

4. 治療薬

●直接型抗ウイルス薬(direct acting antivirals; DAA)
2014 年 7 月には IFN フリーDAA である NS3/4A プロテアーゼ阻害薬(アスナプレビル)と日本初の NS5A 複製複合体阻害薬(ダクラタスビル)の併用が認可され、従来抗ウイルス治療が困難であった IFN 不適格例や IFN 無効例に対する治療が可能となった。

Glecaprevir Hydrate/Pibrentasvir(マヴィレット)
代償性肝硬変では1回3錠を1日1回を12週間
慢性肝炎では1回3錠を1日1回を8週間

Sofosbuvir/Velpatasvir 商品名(エプクルーサ)
慢性肝炎、代償性肝硬変だけではなく非代償性肝硬変でも使用可能
1回1錠を12週間

5. 治療効果

IFN治療により HCV が排除されると、新規(de novo)肝発癌リスクは低下するとされている。わが国からの報告では、IFNフリーDAAs 治療群を Peg-IFN+RBV 群と比較し、3 年ないし 5 年累積肝発癌率は IFN 治療群で 1.02%/2.19%、DAAs 治療群で 1.30%/3.03%であり、両者に差はなかったとして、SVR 後の発癌率は IFN ベース治療でも IFN フリーDAAs 治療でも同等であるとしている。高齢、繊維化症例では発癌リスクが高いとされており治療後も経過観察が必要である。