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自己免疫性肝炎

1. 概要

自己免疫性肝炎は、原因や根本的治療法が未だ明らかになっていないが、自己免疫機序が関与していると考えられる肝炎である。発症には急性、慢性のいずれも存在し、しばしば全身倦怠感、易疲労感、食指不振などの症状を伴うがほとんどの場合は無症候性で検診などの血液検査で肝障害を指摘され発見されることも多い。慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群、関節リウマチなどの他の自己免疫性疾患を合併することも少なくない。中年以降の女性に好発する(男女比1:6)ことや一般的に副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬が著効するため長期予後は健常人と同等であることが特徴であり、国の指定難病となっている。

2. 診断

肝炎ウイルスを含むウイルス感染、薬物性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎など既知の肝障害の原因を除外することが重要であり、典型例・非典型例共に治療開始前に肝生検を行い、その組織所見を含めて診断することが原則である。国際自己免疫性肝炎グループ(IAIHG)の改訂版国際診断基準が有用である。

3. 治療

治療は重症度により異なり、軽症例ではウルソデオキシコール酸を使用することもあるが、原則はプレドニゾロンによる治療を行う。プレドニゾロン初期投与量は0.6mg/kg/日以上を目安とし,血清トランスアミナーゼ値と血清IgG 値の改善を効果の指標に漸減する。維持量は血清トランスアミナーゼ値の基準値範囲内への改善、維持をみて決定する。再燃を繰り返す例や副作用のため十分量のプレドニゾロンを使用しにくい例では、アザチオプリン(1~2mg/kg/日)の併用を考慮する。 また重症例や急性肝不全症例に対してステロイドパルスを行うことがあるが十分なエビデンスはない

(参考)

●簡易型スコア
  Simplified Criteria for the Diagnosis of Autoimmune Hepatitis(2008年)

抗核抗体(ANA) or 抗平滑筋抗体(SMA)
抗核抗体(ANA) or 抗平滑筋抗体(SMA)
肝腎マイクロゾーム抗体(LKM)
SLA抗体(SLA)
40倍以上
80倍以上
40倍以上
陽性
1点
2点
2点
2点
IgG >正常上限
>1.1倍
1点
2点
肝生検 適応像
典型像
1点
2点
ウイルス性肝炎の否定 可能 2点

  6点以上:疑診(probable AIH)      7点以上:確診(definite AIH)


●国際診断スコア

項 目
点 数
女性   +2  
ALP:AST又は
ALP:ALT
<1.5
1.5~3.0
>3.0
+2
0
‐2
1.ALPとALT値との比は、それぞれを正常の上限値で徐した比で表される。すなわち、(ALP値÷ALP正常上限値)÷(AST÷AST正常上限値)。ALTについても同様に計算する。
血清グロブリン又はlgG値・正常上限値との比

>2.0
1.5~2.0
1.0~1.5
<1.0

+3
+2
+1
0
 
ANA、SMA又はLKM-1抗体 >1:80
1:80
1:40
<1:40
+3
+2
+1
0

2.ゲッ歯目組織切片を用いた関節免疫蛍光法による自己抗体力価。ANA力値はHep-2細胞を用いた間接免疫蛍光法による測定も可。小児は低力価でも陽性。

AMA陽性   -4  
肝炎ウイルスマーカー 陽性
陰性
‐3
+3
3.A型、B型、C型肝炎ウイルスマーカー(すなわちlgM anti-HAV,HBs Ag,lgM anti-HBc,Anti-HCV及びHCV RNA)。これらの肝炎ウイルスマーカーが陰性であっても肝障害を惹起し得るウイルス(CMV,EBVなど)の関与が想定される。