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新時代のチーム医療「進行直腸癌」治療のご案内

公開日

新しい治療により「手術をしない選択肢」も。診療科の枠を超えた集学的治療を展開しています。

新しい進行直腸癌治療のご案内

 進行直腸癌は手術単独では約3割が局所再発することが知られており、局所再発を抑制する目的で、放射線、抗がん剤を組み合わせて治療していきます。腫瘍の進行度や場所によって、治療方針が異なりますので、それぞれの患者さんの治療方針を外科、放射線腫瘍科、化学療法センターで話し合いながら決めていきます。
 最近では、これらを集学的治療(Total NeoadjuvantTherapy;TNTと呼ばれています)として注目を集め、肉眼的にがんが消失した状態(臨床的完全奏効)となることがあります。
 この場合、すぐに手術を行わずに慎重に経過観察を行う「Watch and Wait療法」を行っています。これまでは永久人工肛門となっていた患者さんでも、この治療を行い、経過をみていくことで、約25%は3年間手術を行わずに経過を見ることが可能であると報告されており、当院ではこの治療に放射線増感薬を使用し、より手術を回避できないかを臨床研究しています。
 進行直腸癌の患者さんがいらっしゃれば、ご相談も含めてぜひご紹介ください。

TNT(Total Neoadjuvant Therapy)の概要

進行直腸癌の治療方針

手術をするなら負担の少ないロボット手術で

 従来の腹腔鏡手術では直線的にしか動かなかった手術器具が、ロボット手術では人間の手首よりも広い可動域を持つことで、狭い骨盤内においても直腸癌を一つの膜に包まれた状態で切除することが可能になります。また、手振れ防止、縮尺機能(手元で6cm動かしても、お腹の中では2㎝しか動かない)を備えることで、より繊細な手術が可能になります。直腸癌に対するロボット手術は、腹腔鏡手術よりも短期成績が良好であることが報告されています。内視鏡外科学会認定の直腸・結腸プロクター取得医である私が中心となって、積極的にロボット手術を行っています。 

ロボット手術の利点

放射線治療からのアプローチ

 KORTUC(Kochi Oxydol-Radiation Therapy for Unresectabe Carcinomas)は本邦で開発された増感放射線治療です。低濃度過酸化水素とヒアルロン酸を用い、抗酸化酵素を分解すると同時に酸素を供給することによって放射線治療の効果を高める現在研究段階の治療法です。放射線腫瘍科では2010年に導入し、主に乳癌や子宮頸癌を対象として300例以上に実施し、従来の放射線治療では得られないような著明な局所制御効果が確認されています。この度、新たに直腸癌に適応を広げました。下部進行直腸癌でWatch and Wait 療法(手術をしない治療)を強くご希望される患者さんを対象としています。
 術前放射線化学療法を行い、消化器内科の協力により大腸内視鏡を用いて増感剤を直接腫瘍内に投与します。放射線化学療法にて癌が消失した場合はすぐに手術を行わず、慎重に経過をみます。癌が遺残している場合は、手術を受けていただく必要があります。手術前の集学的治療にKORTUCを用いることで癌が消失する可能性が高まることが期待されています。Watch and Wait療法に興味のある患者さんがございましたら、ご相談ください。 

KORTUC(増感放射線療法)の概要

抗がん剤治療からのアプローチ

  本邦における局所進行直腸癌の標準治療は手術ですが、便を貯める直腸が切除される影響で、術後に頻便が生じることや、腫瘍が肛門近くに位置する場合には人工肛門が必要となることなど、QOLの低下が問題となっています。海外では、進行下部直腸癌に対して、TNTが標準治療の一つとしてみなされています。進行下部直腸癌に対するTNTは有望な治療ストラテジーの一つとして各国で臨床試験が実施されています。こちらの治療を実施することで、完全奏効(がんの消失)が得られる可能性が高くなり、手術を回避できる可能性が高まる一方で、強力な術前治療には副作用や合併症など一定のリスクが伴います。当院では診療科を跨いだ経験豊富な医師が協力して、これらの集学的治療を安全に実施する事を心掛けています。

TNTにより肉眼的にがんが消失した状態

受診について

受診をご希望の患者さんは、かかりつけ医にご相談ください。かかりつけ医から本院医療連携室にご予約していただき、診察日を事前にお取りいたします。

はじめに一般・消化器・小児外科の濱元へご紹介ください。外来日は木・土(第1.3)となります。(2025年5月現在)
・直腸診で腫瘍を触知する方
・"手術せず"、人工肛門を回避したい方

このような患者さんはご紹介ください。

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