心臓血管外科

当科の特色

心臓血管外科では、成人の心臓病と、大血管(大動脈、大静脈)や手足の血管の病気を、個々の患者さんの状態に応じた最良の手法を用いて治療しております。

具体的には、大動脈弁や僧帽弁などを侵す心臓弁膜症、胸部や腹部の大動脈瘤や大動脈解離、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、成人期に至った先天性心疾患、そして閉塞性動脈硬化症や下肢静脈瘤などの四肢の血行を侵す病気の外科治療、さらに不整脈に対するペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)などの植え込み手術まで、心臓と血管の病気に対するすべての外科手術を行うことができる体制を整えています。

精度の高い術前検査を経て、その患者さんに最も適した治療方法の選定を行い、最高の技術をもって、納得いただける医療を提供することが当科の信条であります。また、治療にあたっては、病気の現状と選択肢となるすべての治療法について詳しくご説明申し上げ、患者さんやその御家族と一緒になって診療を進めるよう心掛けております。

主な対象疾患

  • 心臓を養う血管である冠動脈が、生活習慣病などの影響で狭くなると心臓への血流不足が生じ、虚血性心疾患を発症します。冠動脈バイパス手術は、冠動脈の狭い部分の上流と下流を新たな血管でつなぎ、血流を改善する手術です。治療効果は長持ちしやすく、1回の手術で3~6か所の血管を治療することも可能です。心筋梗塞で壊死した心臓の部分(心室瘤、心室中隔穿孔)を修復する手術も行います。

    診療の特徴と外科手術
    • 冠状動脈バイパス手術(心臓を止めないoff-pump手術)
    • 心室瘤切除術
    • 心室中隔穿孔閉鎖術
    • 左心室形成手術など
  • 治療の概要説明[150字程度] :心臓の内部には血液の逆流を防止する弁が4か所に存在します。それらの逆流防止弁の機能に異常をきたす場合(弁が硬化して開かない、弁が変形して隙間から逆流してしまう)に、

    1. 自らの弁を修理して、正常の機能に戻す、
    2. 傷んだ弁を摘出して人工の弁で取り換える、
    3. 傷んだ弁の口に、カテーテルで人工弁を挿入・移植する

    という3通りの治療方法が存在します。
    当科では、患者さんの年齢や病状に応じて、最適な治療方法を選択いたします。

    診療の特徴と外科手術
    • 弁形成術(僧帽弁閉鎖不全症の弁形成率は90%以上)
    • 人工弁置換術および経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVIあるいはTAVR)
  • 心臓から打ち出された血液は、大動脈という直径が20~35㎜の太い血管で全身に運ばれます。この大動脈が異常に拡張した状態が大動脈瘤、大動脈の内壁に亀裂が入り、壁が内側と外側の二層に裂け広がる状態を大動脈解離と呼びます。いずれも、破裂し、大出血を起こして生命が危険となります。瘤や解離を起こした部分を人工血管で置き換えたり、ステントグラフトという内筒をカテーテルで挿入して破裂を予防します。

    診療の特徴と外科手術
    • 大動脈瘤
    • 動脈瘤専門外来を常設
    • 他の病院で手術不能あるいは困難と判断された重症例の積極的治療
    • 胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、大動脈解離に対する人工血管置換術やステントグラフト内挿術
    • 急性大動脈解離や大動脈瘤破裂に対する緊急治療
    • 遺伝的素因を有するMarfan症候群やEhlers-Danlos症候群の患者さんの、生涯にわたる管理と治療
  • 幼少期に小児心臓血管外科で治療を受けた患者さんが成人期に再び手術が必要となる場合があります。また、成人になって初めて先天性の心臓病を診断される患者さんも少なくありません。このような、成人期での心臓と血管の外科治療を行います。

    診療の特徴と対象疾患
    当院では、小児心臓血管外科の専門医と成人心臓血管外科の専門医が協働して診療に当たります。その結果、患者さんの生涯にわたる絶え間ない診療が可能です。
    • 心房中隔欠損症
    • 心室中隔欠損症
    • Fallot四徴症
    • 動脈管開存症
    • 複雑心奇形
    • 小児期に手術を受けた成人の患者さんの様々な病気
  • 心臓の筋肉が徐々に侵され、心臓のポンプとしての機能が低下してゆく心筋症に対して、外科手術が有効な場合があります。
    自らの心臓を維持するため、人工心臓や心臓移植以外の手法で心臓の機能の回復を図ります。

    外科手術
    • 拡張型心筋症に対する左心室形成術(Batista手術、SAVE手術)
    • 心筋切除術
  • 心臓に腫瘍ができることは稀です。しかし、心臓の腫瘍は患者さんの生命を脅かすことが多い疾患です。当科は、循環器内科と放射線科と連携し、確実な診断に基づく治療方法の選択を行います。世界的に稀な腫瘍の切除例も経験しました。

    対象疾患
    • 心臓粘液種
    • 脂肪種
    • 乳頭状線維弾性腫
    • 血管腫
    • 肉腫などの悪性腫瘍
  • 不整脈には異常な脈が増える頻脈性と、脈が減る徐脈性の2種類があります。当科では、徐脈性の不整脈に対して、電気的に心臓を刺激して脈の数を補充するペースメーカーの植え込みを1966年から行っています。現在までに、数千名の患者さんを治療させてていただきました。国内有数の植え込み施設です。

    診療の特徴
    • ペースメーカー植込みの決定と手術および手術後の機能検査
    • 植込み型除細動器(ICD)植込みの決定と手術および手術後の機能検査
  • 主に下肢の動脈の内腔が狭くなることで血行が悪くなり、歩くとふくらはぎが重く痛くなる、足指が紫色に変色する、などの症状が出ます。閉塞性動脈硬化症に対する治療には、動脈の狭くなった部分を広げる(ステント留置)、狭くなった部分を人工の血管や患者さん御自身の別の血管で取り換える、あるいは狭い部分を飛び越して新たな血液の流れ道(バイパス)を設置する方法があります。患者さんに最適の選択肢を提案いたします。

    外科手術
    • 閉塞性動脈硬化症に対する動脈バイパス手術(人工血管や自己血管を使用)
    • 血管形成手術・カテーテル治療(ステント留置)
  • 長年にわたる長時間の立ち仕事に従事された方や、産後の女性などで、下肢の表面に青く、太く、ミミズ張れのように膨らんだ静脈が見られます。静脈瘤です。下肢が重く疲れやすい、痛む、浮腫むといった症状から、皮膚が変色してえぐれて潰瘍となるなどの重症まで、様々な症状を起こします。専門外来を開設しています。まずは、手術以外の方法を十分検討した上で、必要な患者さんに、下肢静脈瘤のカテーテル焼灼術を行います。小さな創で、短期間入院(一泊二日)の治療プログラムを提供します。余病をお持ちの患者さんも、専門家の揃った大学病院での治療は安心です。

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主な検査

全身血管系CTとMRI / 心臓と末梢血管、静脈瘤の超音波検査 / ホルター心電図検査 / 四肢血圧同時測定

臨床指標

  1. 心臓血管外科

    項目 実績 単位
    ペースメーカー及びICD移植術  144
    冠動脈疾患に対する手術  32
    弁膜症に対する手術  148
    大血管手術(胸部)  77
    大血管手術(腹部)  46
    先天性疾患に対する手術(成人)  2
    先天性疾患に対する手術(小児)  65
    その他  108
    手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与件数 467/467 手術開始前1時間以内に予防投与した退院患者数/手術を受けた退院患者数
    予定手術後24時間以内の再手術件数  3
  2. 心臓血管外科

    項目 実績 単位
    ペースメーカー及びICD移植術 157
    冠動脈疾患に対する手術  47
    弁膜症に対する手術  102
    大血管手術(胸部) 80
    大血管手術(腹部) 61
    先天性疾患に対する手術(成人) 3
    先天性疾患に対する手術(小児) 95
    その他 89
    手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与件数 631/634 手術開始前1時間以内に予防投与した退院患者数/手術を受けた退院患者数
    予定手術後24時間以内の再手術件数  2
  3. 心臓血管外科

    項目 実績 単位
    ペースメーカー及びICD移植術  141
    冠動脈疾患に対する手術  55
    弁膜症に対する手術  120
    大血管手術(胸部)  54
    大血管手術(腹部)  69
    先天性疾患に対する手術(成人)  1
    先天性疾患に対する手術(小児)  52
    その他  71
    手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与件数  391/391 手術開始前1時間以内に予防投与した退院患者数/手術を受けた退院患者数
    予定手術後24時間以内の再手術件数  0

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関連ページ・サイト

施設認定

  • 日本外科学会専門医制度修練指定施設
  • 日本胸部外科学会指定施設
  • 心臓血管外科専門医認定機構の基幹施設
  • 日本循環器学会循環器専門医研修施設

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