子宮筋腫の治療方針

子宮筋腫の治療方針フローチャート(大阪医科薬科大学病院)

腹式子宮筋腫核出術

  • 適応症例:腹腔鏡手術が困難な巨大筋腫(10 cmを超える筋層内筋腫や15 cmを超える漿膜下筋腫)
  • 創部:恥骨上縁から臍の高さまで(子宮の大きさ次第でさらに大きくなる場合も)
  • 麻酔:全身麻酔+硬膜外麻酔
  • 手術時間:3時間程度
  • 入院期間:9日間
  • 自宅安静:3週間程度
  • メリット:どんなに大きくても手術が可能。直接子宮筋腫を触知して核出するので取り残しの心配はない。とても小さい筋腫も摘出可能。
  • デメリット:創部が大きくなり、術後復帰に時間がかかる。術後半年は避妊が必要。分娩は帝王切開になることが多い。出血量が多め。
  • 備考:手術は火曜日か木曜日 前日入院

腹腔鏡下子宮筋腫核出術

  • 適応症例:筋腫の合計が3つ以内で、10 cm以下の筋層内筋腫や15 cm以下の漿膜下筋腫
  • 創部:臍に12 mm、左下腹部に12 mm、左腹部と右下腹部に5 mm
  • 麻酔:全身麻酔
  • 手術時間:4-5時間程度
  • 入院期間:6日間
  • 自宅安静:2週間程度
  • メリット:開腹に比して創部が小さく(整容的)復帰が早い。
  • デメリット:腹腔鏡で確認できない筋層内筋腫は摘出が難しい→取り残しの可能性あり。術後半年は避妊が必要。分娩は帝王切開になることが多い。出血量が多め。
  • 備考:手術は火曜日か木曜日 前日入院

腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術

  • 適応症例:筋腫の合計が3つ以上で、10 cm以下の筋層内筋腫や15 cm以下の漿膜下筋腫
  • 創部:臍に12 mm、左腹部に5 mm、正中下腹部に4 cm
  • 麻酔:全身麻酔
  • 手術時間:4-5時間程度
  • 入院期間:6日間
  • 自宅安静:2週間程度
  • メリット:開腹に比して創部が小さく(整容的)復帰が早い。
    ても小さい筋腫も摘出可能。
  • デメリット:腹腔鏡で確認できない筋層内筋腫は摘出が難しい→取り残しの可能性あり。術後半年は避妊が必要。分娩は帝王切開になることが多い。出血量が多め。
  • 備考:手術は火曜日か木曜日 前日入院

子宮鏡下筋腫核出術

  • 適応症例:3-4cm以内の粘膜下筋腫
  • 創部:なし
  • 麻酔:全身麻酔
  • 手術時間:1-2時間程度
  • 入院期間:3日間
  • 自宅安静:不要
  • メリット:腟からの手術のため腹部に創部は無し。入院期間が短い
  • デメリット:子宮穿孔のリスクがある。症例が限定的。
  • 備考:手術は木曜日 前日入院

子宮動脈塞栓術(UAE)

  • 適応症例:月経困難・圧迫症状を有する子宮筋腫
    薬物療法抵抗性、核出術後の再発、子宮温存希望など
    10 cm以上の巨大筋腫や子宮頸部の筋腫は効きにくい可能性あり
  • 方法:鼠径部の動脈を穿刺してカテーテルを子宮動脈まで進めて球状の塞栓物質(0.5-1mm)を注入して筋腫への血流を遮断する
  • 創部:鼠径部の穿刺創(約2mm)
  • 麻酔:硬膜外麻酔や局所麻酔
  • 手術時間:2時間程度
  • 入院期間:4-5日間
  • 自宅安静:2-3日程度
  • メリット:月経・圧迫症状の改善。腹部の創がない。入院期間が短い。
  • デメリット:当日の下腹部痛が強い。壊死した筋腫は体内に残る。
  • 筋腫の排出、感染、無月経などの合併症や、症状再発の可能性。(個人差あり)
  • 備考:手術は月曜日 前日入院

UAEは産婦人科と放射線診断科が協力して行います。
UAEに関する詳細はこちらをご覧ください。

MEA(マイクロ波子宮内膜アブレーション)

  • 適応症例:過多月経が主訴の筋腫
  • 条件:子宮卵管角部・子宮底部の子宮内膜にマイクロ波アプリケーターが容易に到達できる。
    子宮壁の厚みが10mm以上ある
  • 創部:経腟的に行い、腹部の創部ない
  • 麻酔:全身麻酔
  • 手術時間:3時間程度
  • 入院期間:3日間
  • 自宅安静:ほぼ不要(長くて2日程度)
  • メリット:腹部創部が無し。入院期間が短い
  • 月経量が減少、場合によっては完全無月経となる。
  • デメリット:筋腫の位置や、大きさ、個数など完全に無月経とならないこともある。
  • 術後妊娠は不可。出血はないのに、月経痛と同じ周期的な痛みが残ることがある。
  • 備考:手術は木曜日 前日入院で子宮の入口を拡げる前処置を行う。金曜日に退院

薬物療法

偽閉経療法(GnRH療法)

  • 適応症例:40歳後半で閉経に近い人。ホルモン状態を閉経にさせることで女性ホルモンが低下し、筋腫を一時的に縮小させる
  • 方法:①GnRHアゴニストと呼ばれる皮下注射もしくは点鼻薬。4週毎に一度でよいが、一時的に大きくなったり、不正出血がある。
    ②GnRHアンタゴニストと呼ばれる内服薬。毎日食前に内服が必要。①に比べて一時的に大きくなったり、不正出血があることも少ない。
  • メリット:腹腔鏡手術困難症例も縮小すれば腹腔鏡が可能になる。
  • デメリット:更年期症状が出る可能性がある(火照り、発汗、関節痛、倦怠感など)。
    骨粗鬆症のリスクがあるためいずれも 6か月までで休薬。
    使用をやめるとリバウンドする。

LNG-IUS

  • 適応症例:過多月経
  • 条件:性感染症、子宮内腔異常、粘膜下筋腫、卵巣チョコレート嚢腫合併では使えない。
  • 方法:合成黄体ホルモンであるレボノルゲストレルを子宮内に挿入(5年間)
  • メリット:外来で装着可能であり、入院は不要。一度装着すると5年間交換不要である。避妊効果もあり。
  • デメリット:自然脱落がある。

腹式単純子宮全摘出術

  • 適応症例:腹腔鏡手術が困難な巨大筋腫(10 cmを超える筋層内筋腫や15 cmを超える漿膜下筋腫)
  • 創部:恥骨上縁から臍の高さまで(筋腫サイズに合わせ大きくなる場合も)
  • 麻酔:全身麻酔+硬膜外麻酔
  • 手術時間:3時間程度
  • 入院期間:9日間
  • 自宅安静:3週間程度
  • メリット:どんなに大きくても手術が可能。手術の時間は短い。
  • デメリット:創部が大きくなる。術後復帰に時間がかかる。
  • 備考:手術は火曜日か木曜日 前日入院

腹腔鏡下単純子宮全摘出術

  • 適応症例:筋腫の合計が3つ以内で、10 cm以下の筋層内筋腫や15 cm以下の漿膜下筋腫
  • 創部:臍に12 mm、左下腹部に12 mm、正中腹部と右下腹部に5 mm
  • 麻酔:全身麻酔
  • 手術時間:4-5時間程度
  • 入院期間:6日間
  • 自宅安静:2週間程度
  • メリット:開腹に比して創部が小さく(整容的)復帰が早い。
  • デメリット:腹腔内の限られた空間での操作であり、時間を要する場合がある。 膣からの子宮摘出の際に、時間を要する場合がある。
  • 備考:手術は火曜日か木曜日 前日入院

ロボット支援下単純子宮全摘出術

  • 適応症例:筋腫の合計が3つ以上で、10 cm以下の筋層内筋腫や15 cm以下の漿膜下筋腫
  • 創部:臍、右腹部2ヶ所、左腹部にそれぞれ8 mm、左腹部に12 mm
  • 麻酔:全身麻酔
  • 手術時間:4-5時間程度
  • 入院期間:6日間
  • 自宅安静:2週間程度
  • メリット:開腹に比して創部が小さく(整容的)復帰が早い。
  • デメリット:腹腔内の限られた空間での操作であり、時間を要する場合がある。
    膣からの子宮摘出の際に、時間を要する場合がある。
  • 備考:手術は火曜日 前日入院