当科では、悪性腫瘍に対する腹腔鏡手術を2010年から全国の大学に先駆けて施行してまいりました。子宮体がんにおいては全国の大学病院では最も多くの症例数を施行しており、術中出血量も少なく、術後疼痛の緩和や早期回復に寄与し、良好な治療成績とより低侵襲な治療を提供しております。また中~高リスク子宮体がんに対して行う傍大動脈リンパ節郭清においても腹腔鏡下手術で行っており、手術侵襲をより少なくするように努めております。子宮頸がんに対しては、1A2期から1B1期症例に対して腹腔鏡下広汎子宮全摘出術を行っており開腹手術と比較しても術中出血や術後疼痛や合併症が少ないだけでなく、術後の排尿障害も軽減し退院までに尿意と自尿を認めることができております。
また、2016年からはダヴィンチによるロボット支援手術を開始しております。腹腔鏡手術以上に繊細な手術が可能となり、より困難な手術症例にも対応しております。さらに当科では術後のリンパ浮腫発生を軽減する目的で、子宮頸がん、子宮体がんにおけるセンチネルリンパ節生検を臨床研究として行っております。早期子宮頸がん・体がんの患者さんにご説明の上、ご同意いただければセンチネルリンパ節生検を行うことによりリンパ節郭清を省略し、術後のリンパ浮腫をできる限り少なくするよう努めております。
我々は悪性腫瘍に対するがん治療だけでなく、がん罹患による精神的な負担やがん治療後におこる様々な精神的・身体的・社会問題に関しても取り組んでおり、婦人科がん治療後患者(がんサバイバー)を対象とした専門外来を開設し、がん患者さんのヘルスケアを行っております。
近年増加している若年発症の婦人科がん患者に対しては妊孕能温存治療にも積極的に取り組んでおり、初期子宮頸がんに対しては広汎子宮頸部摘出術を行い、できる限りの妊孕能温存手術を行っております。また、院内各診療科と協力し、若年がん患者(小児がんサバイバーを含む)に対する卵子・胚・精子凍結保存治療を行っており、がん治療後に妊娠・出産が可能になるよう努めております。今後は多様なニーズに応えるべく、若年女性がん患者に対する卵巣凍結に向けても準備を進めていく予定です。
臨床研究や治験については随時行っており、新たな治療法の研究・開発を行っております。また新しい治療の開発やevidenceの確立のために、単独施設での開発が不十分な場合は、全国的な臨床研究や治験に参加しております。私どもは、日本で最も権威のある臨床研究グループである日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)や婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)などに参加しております。
良性疾患に関しても、手術適応があれば積極的に腹腔鏡手術を選択し、低侵襲に努めています。骨盤臓器脱に対しては、再発率の低い腹腔鏡下仙骨膣固定術を施行しております。ご紹介に際して手術治療の必要か否かの判断は問いません。
個々の疾患については、セカンドオピニオンをご希望の方も含めてご紹介いただければ幸いです。