DNAR指示に関する指針
はじめに
DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)指示は、あらゆる治療を講じても回復の見込みがない、あるいは救命の可能性がない状態の患者が心停止した時に蘇生行為を行わないという事前指示である。
安易にDNAR指示のインフォームド・コンセントを取得し、その結果、原疾患によるもの以外の心停止時の蘇生行為を差し控えることや、医療行為そのものの差し控えが行われることは、DNARの指示が目的とするものではない。
本指針は大阪医科薬科大学病院において、DNAR指示が安易な“医療の差し控え”につながることなく、患者の尊厳を守り、患者がより良い最期を迎えられることを目的に定めるものである。
DNAR指示の成立には、医師等の医療従事者から患者本人及びその家族等へ、DNAR指示についての適切な情報の提供と説明がなされ、さらに、患者本人が多職種の医療従事者から構成される医療チームと十分に話し合うことが求められる。そこでは、患者本人による意思決定が最も重要な基本原則となる。
本指針では、最初にDNAR指示に関する特に注意すべき点を示し、その後、各項目について詳述する。
- DNAR指示は、あらゆる治療を講じても回復の見込みがない、あるいは救命の可能性がない状態の患者が心停止した時に、蘇生行為を行わないことについての事前指示である。したがって、それ以外の通常の医療・看護については別に議論すべきものであり、DNAR指示により治療内容が修飾されてはならない。心停止を「急変時」のような曖昧な語句にすり替えるべきではない。
- DNAR指示にかかわる合意形成と終末期医療の実践、各種治療・ケアについての合意形成はそれぞれ別個に行わなければならない。
- DNARの方針が決定した後であっても、原疾患以外の予期しない原因による突然の心停止の場合は、原則として蘇生行為を行う。
- DNAR指示の妥当性を患者と医療チーム(主治医に加え、医師以外の職種を含む当該患者に関わる医療チーム)が繰り返して話し合い、評価すべきである。話し合った内容については「多職種カンファレンス記録」のテンプレートを用いて丁寧に診療録に残す。
- DNAR指示の説明及び意思の確認は、説明する医師と1人以上の同席者を必ず入れて行うこと。同席者は医師以外の医療従事者とする。説明した内容や意思確認の結果については、説明を受けた患者及び家族等の反応や理解度と合わせ「インフォームド・コンセント記録」(ICテンプレート)を用いて、診療録に残す。
- DNARの意思を確認した場合、診療録の患者掲示板の「重要事項」の欄へ、DNAR指示の内容(原疾患、原疾患の状態、治療内容等)及び説明日を記載する。
- DNARの妥当性の確認及び意思の確認は、それぞれ必要に応じて繰り返し行い、その都度、「多職種カンファレンス記録」及び「インフォームド・コンセント記録」のテンプレートを用いて診療録に記載し、患者掲示板の説明日を更新する。
- DNAR指示の説明をする際には別紙1「DNARについての説明書」を、同意を取得する際には別紙2「DNARについての同意書」をそれぞれ用い、患者(あるいは代諾者)及び説明した医師が署名する。また、同意書を提出後も、いつでも撤回が可能であることを繰り返し説明する。
DNAR指示の定義
DNAR指示とは、原疾患が回復の見込みがなく、救命の可能性がない状態の患者が心停止した際に蘇生行為を行わないという事前指示である。この指示は、患者の意思に基づき又は家族等との話し合いにより推定した患者の意思に基づくものである。
DNAR指示は心停止時のみに有効である。DNAR指示が心肺蘇生以外の通常の医療行為(ICU入室、投薬、機械的臓器補助、苦痛の緩和、看護やケアなど)に影響を与えてはならない。また、胸骨圧迫は行うが、気管挿管は行わないといった、一部のみ実施する心肺蘇生(Partial DNAR)は推奨しない。
DNARの方針が決定した後であっても、予期しない原因による突然の心停止の場合は、原則、蘇生行為を行う。
DNAR指示の適応
次の①~③全てに合致していることが必要である。
損なう可能性があることについて、医療チームで慎重かつ客観的に議論し、判断されていること。
② 回復の見込みがない状態の患者が心停止になった場合、心肺蘇生を行わないことを求める本人の意思(あるいは推定意思)を確認できること。
③ 医療チームの判断が本人・家族等の意見と一致していること。
DNAR指示に対する同意の取得
DNAR指示への同意の取得には、患者に関わる多職種で構成された医療チームが、患者の状態がDNAR指示の適応に合致することを確認した上で、患者及び患者家族等へ説明を行う。説明の際には、説明する医師と、医師以外の医療従事者が1人以上同席すること。
患者本人と医療チームとの十分な話し合いを踏まえた本人による意思決定を基本とし、医療チームとして方針の決定を行う。
病状等から本人の意思が確認できない場合には、事前指示文書の有無を確認し、事前指示文書が確認できない場合には、本人の意思を推定できる家族等と十分な話し合いを行い、本人にとって最善と推測される方針をとることとする。
また、一度DNAR指示に同意したとしても、患者及び家族の意思に変化が生じた際にはいつでも撤回できる旨を説明する。
DNAR指示の検討及び議論の内容については「多職種カンファレンス記録」のテンプレートを用いて診療録に記載し、説明及び同意取得の内容については、「インフォームド・コンセント記録」のテンプレートを用いて診療録に記載する。
DNAR指示への同意の取得や実践に関する臨床倫理的疑義が生じた場合には臨床倫理サポートチームに助言を求めることができる。