胸部悪性腫瘍診療の概要
呼吸器内科・呼吸器腫瘍内科
胸部悪性腫瘍診療の概要
特色ある診療の強み
- 新規薬剤に最も経験を有する医師による集学的治療、特に分子標的治療薬やがん免疫療法(特に複合がん免疫療法)を積極的に実施しています。
- 早期開発臨床試験・治験を多数実施、日本の代表的施設としてグローバル試験に参加、常に教科書を書き換えるような開発試験も日常臨床と並行して実施しています。
(NEJM 2017(PACIFIC Study), NEJM2017(AURA3), NEJM 2018(PACIFIC Study OS ), Lancet2019(KEYNOTE-042), Lancet Oncology2020(REMORA)) - 国立がん研究センタセンターを中心とする、肺がんゲノムプロファイリング検査(SCLUM-JAPAN)や、保険診療によるオンコマイン Dx Target Test などを積極的に実施しDriver遺伝子を検索することで個別化医療の実施、さらには治験や早期開発試験に積極的に参加可能です。
- Patient-Centered-Cancer Treatment(患者を中心としたがん医療)を理念とし、多職種・他領域との連携を強化した集学的医療を提供します。
個別化医療の未来を切り拓く分子標的治療薬
EGFR遺伝子変異は2004年に発見され、いまやDriver変異として、肺癌個別化医療の中心的な標的とされています。肺がん診療ガイドラインでも“EGFR遺伝子変異陽性の症例では、1次治療にEGFR-TKI単剤を行うよう勧められる。(Grade A)”とあり症例選択、個別化治療の重要性が述べられています。現在では、ALK融合遺伝子やROS1融合遺伝子、BRAF遺伝子変異などもターゲットとなっています。
分子標的治療薬への耐性が新たな課題となってきました。例えばEGFR遺伝子変異に対する薬剤に対する抵抗性の原因としてT790M遺伝子変異陽性が挙げられ(EGFR-TKI治療後の約半数が陽性)、標的として薬剤開発が進められました。この第3世代EGFR-TKIの導入によりさらなる治療効果を示しています 。
がん免疫療法による長期生存の追求
従来の免疫療法は、免疫機能の攻撃力を高める方法が中心でした。最近、がん細胞が免疫の働きにブレーキをかけて、免疫細胞の攻撃を阻止していることがわかってきました。そこで、がん細胞によるブレーキを解除することで、免疫細胞の働きを再び活発にしてがん細胞を攻撃できるようにする新たな治療法が考えられました。その中でも、現在では免疫チェックポイントと呼ばれているブレーキ役の部分(PD-L1とPD-1の結合)を阻害する薬(免疫チェックポイント阻害薬)が非小細胞肺がん治療で使用されるようになり始め、さらに治療効果を高めていくために他の抗がん剤との併用療法すなわち、複合がん免疫療法を中心に進行肺癌に対する治療を展開しています。
副作用(高められた免疫が暴走すると体の様々な臓器に障害を及ぼし時に命に関わるような副作用となります)が懸念されますが、多くの専門家との連携により適切な対応が必要になります。