気管支喘息および類縁疾患(呼吸器内科・呼吸器腫瘍内科、小児科):呼吸機能検査に関して

アレルギーセンター

気管支喘息

気管支喘息とはどのような病気でしょうか?

患者さんにこう尋ねると「ゼーゼーヒューヒューする病気」とか「アレルギーが原因で起こる病気」とか色々な答えが返ってきます。
どの答えも正解なのですが、多くの場合不十分な答えが返ってきます。
私は「喘息は氷山のような病気です」と説明します。
患者さんは海に浮かぶ船からこの病気と向き合い、「自覚している症状」を喘息として認識されるのですが、これは喘息という大きな氷山の一角でしかありません。氷山と同じように喘息の本体は海の中、船の上にいる患者さんからは見えにくいものなのです。

氷山の本体は巨大な氷の塊ですが、喘息の本体は何でしょう?

喘息の本体は「気道の慢性炎症」と呼ばれるもので、喘息の治療とは、「気道の慢性炎症に対する治療」なのです。
よく「症状が無くなったから喘息は治ったと思った。」と仰る患者さんがおられますが、これは誤解で、症状がなくても慢性炎症は残っていることがあります。慢性炎症が残っていると、治療を中止してしまうことで炎症が悪化し、喘息症状を再び発症してしまいます。

気道の慢性炎症を「見える化」する

炎症に対する治療をしましょう、と説明しても患者さんには伝わりにくいのが現状です。
何故なら「炎症は目に見えないから」です。
自覚症状が治まっていたら治療も終了したい、と思うのがごもっともな患者さんの希望だと私も思います。私たちの喘息診療はまずこの目に見えない炎症を「見える化する」ことから始めます。
喘息患者さんに生じる気道の慢性炎症のほとんどは2型炎症と呼ばれる炎症です。
2型炎症はヘルパーT2細胞や自然リンパ球2型と呼ばれる炎症細胞により引き起こされるのですが、これらの細胞が炎症を引き起こす際に「一酸化窒素:NO」と呼ばれるガスを発生させます。「炎症」を火に例えたら、火から立ち上る「煙」がNOです。
患者さんのはき出す息に含まれるNOの量を測定することで、喘息による気道の炎症を見える化することができるのです。

治療は続くよいつまでも

喘息治療を行うことで、NOを低下させ、正常範囲まで落ち着かせることが可能です。
しかし残念ながら、多くの患者さんの場合、治療を止めてしまうとNOは上昇します。
喘息の治療は眼の悪い人にとっての眼鏡と同じです。眼鏡をかけて良く見えるようになった人が「良く見えるようになったから、もう眼鏡いらんわ!」と、ならないのと同じで、 多くの喘息患者さんは「喘息の治療を継続し『気道炎症が落ち着いた状態』を維持し続けなければならない」のです。

適切な治療を続けましょう

とは言え、喘息治療はこの10年で大きく変化しています。喘息治療のメインは吸入治療ですが、吸入薬についても複数の組み合わせ、形状が使用可能になっています。処方された吸入薬が合わない場合は別のものに変更したって問題はありません。
また、治療の強さも4段階に分かれており、治療を開始したら同じ治療を継続し続けるとは限りません。診察の度に炎症の強さや自覚症状を評価し、その時の状態に応じた強さの治療を提案します。

呼吸機能検査

検査技師のかけ声に合わせて、息を吸ったり、吐いたりする検査です。
アレルギー疾患の中では、気管支喘息と密接な関わりを持ちます。正しい結果を得るために、何度も同じことを繰り返していただく必要があります。
検査の所要時間は20~30分です。

肺活量検査

肺の容量を調べる検査です。 性別、年齢、身長から求めた標準値に 対する割合を評価します。間質性肺炎などで肺が広がりにくくなったり、筋力が低下する病気などで減少します。

努力肺活量検査

全力で息を吸い込んだときの肺活量と、1秒間に吐き出せる量を調べる検査です。一気に吐き出した際のグラフ(フローボリューム曲線)を作成し、気道(空気の通り道)の閉塞を評価します。 通常であれば、(A)のような山形のカーブを描きますが、気管支喘息の患者さんでは、(B)のような下向きに へこんだカーブを描きます。

吸入負荷試験

気道を広げる薬を吸入していただいて、その効果をみる検査です。
吸入後の努力肺活量検査で1秒間に吐き出す量が200ml以上増えて、増加率が12%を超えた場合、気管支喘息が強く疑われます。
また、フローボリューム曲線の形が、右図のように変化します。

2022.06.01 文責:中村 敬彦(呼吸器内科・呼吸器腫瘍内科)、田中 恵美子(中央検査部)