好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)

アレルギーセンター

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)

好酸球性副鼻腔炎とはどんな病気ですか?

副鼻腔炎は、手術などで採取した鼻茸(ポリープ)の病理組織学的所見から、好酸球型と非好酸球型に大きく分類されます。非好酸球性の副鼻腔炎は感染を契機として起こる副鼻腔炎であり、一般的に蓄膿症と呼ばれたりしますが、局所治療や、内服/点鼻治療、手術(内視鏡下鼻副鼻腔手術)による治療効果が期待されます。対して好酸球性副鼻腔炎は、手術をしても再発することの多い難治性の副鼻腔炎とされています。国内では約20万人が好酸球性副鼻腔炎で、そのうち約2万人が重傷症例と考えられており、重症例は厚生労働省が指定する指定難病とされています。好酸球性副鼻腔炎は喘息(特に成人発症型)やアスピリン不耐症に合併することが多く、喘息と同様のメカニズムで発症する副鼻腔炎とされています。当院では耳鼻咽喉科と呼吸器内科が連携し、好酸球性副鼻腔炎患者さんには精密な呼吸機能に関わる検査を行い、喘息の有無を確認しております。

好酸球性副鼻腔炎の主症状

  • 両側に多発する多房性鼻茸 : 鼻閉(鼻づまり)
  • 粘調なニカワ状の鼻汁(ムチン)
  • 嗅覚障害
  • 咳嗽
など

好酸球性副鼻腔炎の診断基準

好酸球性副鼻腔炎に対する治療

好酸球性副鼻腔炎を疑う場合に、初期治療として鼻噴霧用ステロイド薬や抗ロイコトリエン拮抗薬などの薬剤治療が行われますが、治療効果が乏しいことも多く、内視鏡を用いた手術(内視鏡下鼻副鼻腔手術:ESS)が行われます.手術では粘膜病変の除去と、副鼻腔を単洞(1つの空間にする)にし、再発を来しにくい鼻内環境にしますが、好酸球性副鼻腔炎の重症例では手術をしても再発することが多いのが問題となります。
内服治療では唯一ステロイド剤の全身投与が有効ですが、副作用の問題があり、ステロイド剤の長期間の投与はお勧めできません。ステロイド内服を中止すると、鼻茸が再度大きくなり嗅覚障害や鼻閉が再燃してしまいます。好酸球性副鼻腔炎重症例で、手術をしてもすぐに鼻茸が再発してしまうなどのお困りのに患者さんにむけた新規治療法として、喘息治療ではすでに用いられてきた生物学的製剤が好酸球性副鼻腔炎にも適応されるようになり、現在本邦ではDupilumab(商品名:デュピクセント)が保険診療で使用できるようになりました。これまでの治療法に難渋する難治性好酸球性副鼻腔炎に対する画期的な新規治療薬であり、当院耳鼻咽喉科・頭頸部外科での自験例でも、好酸球性副鼻腔炎再発症例に対して投与を行い、効果を実感していただいており、特に数年来匂いがしていなかった患者さんが、匂いを感じられるようになったとの反応を多く認めております。
【説明】
複数回の手術治療をうけたものの再発を来した好酸球性副鼻腔炎症例に対してDupilumabの投与を行った症例。2回目の投与時点で、副鼻腔炎症状全体や嗅覚障害の明らかな改善が確認されました。
好酸球性副鼻腔炎であっても、対象とならないこともありますので、主治医に相談してみてください。

アレルギーセンターへご紹介ください

・重症な喘息に合併する難治性の好酸球性副鼻腔炎(再発例)を有している方
・好酸球性副鼻腔炎に対して生物学的製剤を希望されるかた
・その他、各臓器にまたがるアレルギー疾患をお持ちの方

耳鼻咽喉科 鼻副鼻腔外来へご紹介ください

・副鼻腔炎に対して手術加療を希望される方
・喘息を有し、鼻症状を認める方
・粘度の高い鼻汁や鼻閉を伴う嗅覚障害で困っている方

2022.06.01 文責:菊岡 祐介(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)