食物アレルギー(皮膚科、小児科)

アレルギーセンター

食物アレルギー

食物アレルギーとは何でしょうか?

ある特定の食べ物を食べたり、触れたりした後にアレルギー反応が現れる疾患です。原因となる食べ物(“抗原”とよびます)は、乳幼児期には鶏卵、牛乳、小麦などが、学童期以降は甲殻類や果物、そば、魚類、ピーナッツ・ナッツ類のように、年齢が変わるにつれて変わっていきます。乳幼児期の食物アレルギーの多くは成長に伴い改善し、徐々に食べられるようになります(耐性獲得=寛解)。一方で学童期・成人の食物アレルギーは治りにくいことが知られています。
食物アレルギーと間違えやすいものとして、細菌やウイルスなどにより汚染された食品による食中毒や、フグ毒、キノコ毒などの中毒反応、鮮度の落ちた魚に含まれるヒスタミンなどの生理活性物質がありますが、これらは食物アレルギーには含まれません。

どのような症状が出るのでしょうか?

多くは即時型とよばれるタイプで、通常喫食してから2時間以内に症状がでますが、納豆のように数時間経ってある程度消化されてから症状がでる特殊な抗原もあります。食物アレルギーの症状は皮膚や、呼吸器、消化器、粘膜、神経など身体のさまざまな臓器にあらわれます。皮膚症状が大半ですが、約30%に呼吸器症状や粘膜症状を認めます。複数の臓器に症状があらわれることをアナフィラキシーとよび、血圧低下や末梢循環不良を伴ってアナフィラキシーショックという重症の症状に発展することがあります。また、特殊型(新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症、加水分解コムギ含有石鹸による小麦アレルギー、口腔アレルギー症候群、食物依存性運動誘発アナフィラキシー)と呼ばれるタイプもあります(後述)。

どのように診断するのでしょうか?

問診:症状が出た時の状況をよく聞き取ります。この時、できるだけ思い込みをすてて伝える事が重要です。加工品の場合は、可能な限り原材料がわかるものをお持ちください。問診のみではっきりしない場合は、食物アレルギー日誌を記録して頂く場合もあります。

血液検査:原因食物の特異的IgE抗体検査を行います。当院ではイムノキャップ®という測定方法を用いています。採血が必要ですが、一度に数種類の項目を調べることができます。

皮膚テスト(プリックテスト):皮膚をごく浅く針で刺激し、原因食物エキスをのせて反応を見る検査です。

上記の検査はあくまで補助的なもので、検査陽性=食物アレルギーというわけではないことに注意が必要です。

食物除去試験・食物経口負荷試験:原因と疑われる食品を除去して症状が消失するか、実際に食べてみて症状がでるかを確かめることで診断します。負荷試験は、病院で十分な準備を整えて実施しています。

食物アレルギーの治療はどのようにするのですか?

食物アレルギーでは、症状が出ないように原因となる食品を除去する除去療法が基本です。誤って食べるなどして症状がでた時は、重症度に応じて症状を抑える治療を行います

症状を出さないための対策

過度な食物制限は栄養障害のリスクになりますので、必要最小限の除去をすることが重要です。少量であったり、調理による抗原低減化(加熱・加圧・湯でこぼしなど)を行ったりすることで、食べても症状があらわれない場合は制限不要です。多種類の食物除去療法を行う場合は、栄養バランスに注意するために、管理栄養士から指導を受けるようにしましょう。当院では加工食品のアレルギー表示の見方やアレルギー対応食のレシピも紹介しています。

症状が出た場合の対策

皮膚症状(じんましんやかゆみ)に対しては抗ヒスタミン薬、呼吸症状(咳やゼーゼー・ヒューヒュー)に対しては気管支拡張薬の吸入などを行います。症状が重篤で全身に及び急速に進行するアナフィラキシーでは、アドレナリンの筋肉注射が必要になります。
 
アレルギー症状の重症度分類についてはこちら ※外部サイトに移動します。
アナフィラキシーを起こしたことがある体重15kg以上の方には、自分で注射することができるアドレナリン自己注射(エピペン®)を処方しています。

特殊型食物アレルギー

新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症(新生児・乳児消化管アレルギー)

新生児から乳児期において、ある食物を摂取した後に、嘔吐、血便、下痢などの消化管症状により発症します。摂取後少し遅れて症状が現れたり、特異的IgE抗体が陽性にならない点が即時型アレルギーとは異なります。原因食品は牛乳が主だったのですが、最近は鶏卵(特に卵黄)の増加が注目されています。成長に伴い寛解すると言われています。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

食物のみ・運動のみでは起こりませんが、原因食物摂取後に運動をした時のみ症状がでるアナフィラキシーです。ほとんどが食後2時間以内に症状が出始めます。原因食品は小麦と甲殻類(エビ、カニ)が多いです。運動負荷量が多いと誘発されやすいですが、歩いただけでも誘発されることもあります。生活で注意することは、「運動前は原因食品を摂取しない。」、「原因食品を摂取した場合は、食後最低2時間は運動を避ける。」ということです。また、解熱鎮痛剤(NSAIDs)が運動に変わる誘発因子となることがあるため注意が必要です。

加水分解コムギによる小麦アレルギー

加水分解コムギ含有石鹸(茶のしずく石鹸®)を使っていた人が、小麦の即時型アレルギーを発症するという事例がありました。これは石鹸に含まれていた加水分解コムギに経皮的に感作されることで、アレルギーを発症したと考えられています。このように化粧品や医薬部外品なども食物アレルギーの原因となり得ます。

交差反応による食物アレルギー

ある食物や花粉、動物にアレルギーを起こす場合、それに構造がよく似た他の食物にも同時に反応する場合があります。これを交差反応といいます。いくつか代表的なものを紹介します。

花粉-食物アレルギー症候群

花粉症の患者さんが、原因の花粉と構造がよく似た特定の果物や野菜を食べると、アレルギー症状が出現することがあります。口の中が痒くなったり、ひりひりしたりすることが多いので、口腔アレルギー症候群とも呼ばれます。症状は軽いものが多いですが、豆乳など食品によってはアナフィラキシーを来すこともあります。原因となる物質は熱に弱いので加熱処理後の果物や缶詰は食べられることが多いです。成人に多いですが、最近は小児の患者さんも増えています。1人の患者さんが複数の原因食物を持つことも少なくありません。特異的Ig E抗体測定や皮膚プリックテストなどで診断します。
©Thermo Fisher Scientific(allergyinsider.com
※外部サイトに移動します。 サーモフィッシャーダイアグノスティックス株式会社より許諾を得て転載

ラテックスーフルーツ症候群

ラテックス(天然ゴム)アレルギーの患者さんの中には、バナナ、アボカド、クリ、キウイといった果物のアレルギーを合併する人がいます。これもラテックスと果物の交差反応によるものです。

動物飼育に関連した食物アレルギー

ペット動物の毛などを気道から吸い込むことでその動物に感作され、交差反応で特定の食物のアレルギーを発症することがあります。例えば、猫を飼育している人の豚肉や牛肉のアレルギー(pork-cat症候群)、鳥を飼育している人の生や加熱不十分の鶏卵、鶏肉のアレルギー(bird-egg症候群)です。いずれもペットの飼育を確認することが診断の手掛かりになります。

動物の刺咬傷による食物アレルギー

動物に刺されたり咬まれたりして、食物アレルギーを発症することもあります。
マダニの唾液や消化管にはgalactose-α-1,3-galactose(α-Gal)という糖鎖が存在します。マダニに咬まれた人は、α-Galを含む豚肉や牛肉を食べた2-6時間後と少し遅れてアレルギー(α-Galによる獣肉アレルギー)をきたすことがあります。同じα-Galを含む抗がん剤のセツキシマブに対してもアナフィラキシーを生じる可能性があります。
クラゲによく刺されるマリンスポーツをする人、特にサーファーでは、クラゲ由来のポリガンマグルタミン酸(PGA)と納豆のネバネバ成分であるPGAの交差反応により、納豆を食べた後、少し遅れて(数時間~半日後)アレルギー(PGAによる納豆アレルギー)をきたすことがあります。
いずれのアレルギーも遅れて症状が出るので、半日前まで遡って何を食べたのか確認することが重要です。
当院では中学生までの食物アレルギーについては主に小児科で対応しています。高校生以降も引き続きフォローが必要な患者さんの移行期医療や成人発症の食物アレルギーについては皮膚科と連携して対応していきます。お気軽にご相談ください。

アレルギーマーチ

アレルギー体質のあるお子さんが、次から次へといくつかのアレルギー疾患を発症していく現象を「アレルギーマーチ」と呼びます。このマーチはアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎へとつながっていきますが、早い段階で介入しておけば、このアレルギーマーチを予防できる可能性が高まります。

食事に関する注意点

原因アレルゲンの診断に基づいた必要最小限の除去が基本となります。そのために食物アレルギー表示の正しい見方が必要になります。
 
現在は以下の7品目が表示義務があり、21品目の表示が推奨されています。

注意点

  1. 特定原材料7品目は表示義務がありますが21品目やその他の食品は表示義務がないため表示されないことがあります。
  2. 表示の対象はあらかじめ容器包装されているもの、缶や瓶に詰められた加工食品です。
    ただし外食や、量り売りの惣菜、店内で調理する弁当やパンは表示対象外です。
  3. 代替表記、拡大表記についても理解しましょう。 例)卵の代替表記→たまご、タマゴ、玉子、鶏卵など
    卵の拡大表記→厚焼き玉子、ハムエッグ
  4. アレルゲンが一括表示されていたり省略されていることがあります。
    一括表示→原材料の最後に(一部に○○、△△、▢▢を含む)と記載されているもの
    省略表示→原材料で複数出てくるものは省略できる

当院の食事について

管理栄養士が入院時または入院前の面談で食物アレルギーの聞き取りを行います。 食物アレルギーがある患者さんには原材料まで事前に確認し代替の料理を準備しています。
誤配膳がないように二重のチェックを行い注意しています。
 

アレルギーセンターへご紹介ください。必要に応じて他科と連携して診療にあたります。

  • 食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎・結膜炎など複数のアレルギー疾患があり、より専門的な診察や治療介入が必要な方。
  • 原因不明のアナフィラキシー、湿疹などの原因精査を希望される方。
  • 小児期からのアレルギー疾患で思春期以降のフォロー先をお探しの方。

小児科アレルギー専門外来へご紹介ください。

  • 食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎・結膜炎などのアレルギー疾患のフォロー先をお探しの小児の方。
  • アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法を希望される方。
  • 重症アトピー性皮膚炎に対して生物学的製剤(デュピクセント®)、JAK阻害薬(リンヴォック®、サイバインコ®)治療を希望される方。
  • 重症気管支喘息に対して生物学的製剤(ゾレア®、デュピクセント® 、ヌーカラ®)治療を希望される方。
  • 慢性蕁麻疹に対して生物学的製剤治療(ゾレア®)を希望される方。
  • 食物アレルギーで経口負荷試験、栄養指導、エピペン®処方を希望される方。

【文献】 ※下記U R Lをクリックすれば外部サイトに移動します。
食物アレルギー研究会:  https://www.foodallergy.jp/care-guide2020/cg2020-7/
食物アレルギー診療の手引き2020: https://www.foodallergy.jp/care-guide2020/

2022.06.01 文責:大関 ゆか、岡本 奈美(小児科) 尾籠 賢(栄養科)